ホテル紹介

天然温泉と秋田の美味にうっとり みちのくの名湯宿『湯けむりの宿 稲住温泉』宿泊レポート≪後編≫

後編は夕食からご紹介します。(前編はこちら)

料理もおもてなしの心で磨かれた作品
繊細で大胆、秋田の豊かさと奥深さを存分に

食事処「仙楽」も絵画の多いアートスポット。
実篤の絵もあるので探してみてください。
残念ながら見逃しても、料理をいただく箸と箸置きを選べるという風雅なおもてなしがありました。
箸置きはこんなにたくさん!
ひとつひとつがとても美しくて、迷いながら選びました。

銘酒揃いの秋田の地酒は、飲み比べセットがおすすめです。
ビードロのおちょこが、華やかな味わいや心地よい余韻とぴったり。


最初のお料理は前菜盆盛り。

三日月の器には、鶏松風と水晶卵、畳鰯、炙り穴子小袖寿司に深紅の紅葉がはらり。 秋深まるみちのくの世界に誘われます。

小鉢は、柔らかい煮蛸と香り高い菊花浸し、手前にある現代美術のような一品は?
と思ったら、石垣零余子(むかご)でした。
食材の持つ色味や形を見て味わう、思いもよらぬ新たな発見にワクワクです。

紅葉の器には、餅銀杏松葉串とクリームチーズで和えた燻りがっこ。
スモーキーな燻りがっことクリームチーズの相性がよいことは知っていたけれど、
キャビアを添えるとさらに数段おいしくなって、これはワインにも合いそう。


貝柱真丈とたもぎ茸の先椀に続いて登場したお造り(本鮪、鯛、車海老、勘八、湯葉など)は、
日本海の波間を海老が跳ねているような躍動感。
もう少し見ていたいと思うけれど、箸が止まりません。

かと思うと、次は静まり返ったような竹筒が運ばれてきました。
ふたを開けると、湯気がふわっと立ちのぼり、
中央がピンクの由利牛が、蕪や長芋、甘長唐辛子、丸十(さつまいも)とともに登場です。
鳥海山麓の清らかな水と空気、豊かな牧草で育った黒毛和牛。
きめ細かいサシが、ほどよく引き締まった赤肉に入った繊細な味わいは、蒸すと本当によくわかります。


鍋料理は3種類から選べます。
鰤と平貝のしょっつる鍋か、比内地鶏のきりたんぼ鍋、それとも八幡平豚のしゃぶしゃぶ鍋?
どれも捨てがたく、しばし悩んで比内地鶏のきりたんぼ鍋にしました。
香りのよいセリと舞茸が、しっかりした肉質の比内鶏と出会った滋味が、
きりたんぽにじわっと沁み込み、不思議な懐かしさを感じます。
各地の自慢のご当地鍋の中でも、秋冬に食べたい鍋のベスト3に入ると思います。


鍋と一緒に、「心ばかり」も。
心ばかりは、鰰飯寿司(ハタハタずし)、ヤーコン胡桃和え、茸天婦羅、あら煮、親子蒸しの5つから、
好きなものを好きなだけ選べるうれしいおもてなし。
米と麹をたっぷり使った鰰飯寿司は、さわやかでやさしい味わい。
秋田の正月料理に欠かせない郷土料理とのことです。
鮭とイクラの親子蒸し(茶わん蒸し)はなめらかで、
イクラがよいアクセントだなと味わっている間に、するするとお腹に収まります。


滑子湯葉うどんと鯛御飯から選べる食事は鯛御飯にして、
水菓子までおいしくいただいてごちそうさま。
秋田がおいしい米と銘酒の地だとは知っていましたが、それだけではなく、
海山の幸に加えて、郷土料理もこんなに豊かなところだったとは!とびっくりしました。


朝の膳をにぎやかに彩る秋田の美味と
「香りふわふわ」で味わうあきたこまち

翌朝は、露天温泉でしっかりお腹をすかせて食事処に向かいました。
秋刀魚利休焼や塩鮭、昨夜とは違う海の幸が並ぶ。
伝統工芸・秋田杉の曲げわっぱに、鰊昆布巻きや海老射込み茄子、比内地鶏つくね串など
小さな美味がどっさりで、朝のおかずならこれだけでも十分なぐらい。

御飯の1杯目はコトコト煮たお粥、2杯目は御飯を「香りふわふわ」でいただきます。
極薄のかつお節を湯気の立つ御飯にこんもりと乗せて、
出したところに、スプーン1杯のまろやかな白土佐醤油をかけてできあがり。
日本人に生まれた幸せが、口いっぱいに広がりました。
家庭で毎朝かつお節を削っていた頃は、珍しくない朝ごはんだったのかもしれませんが、
炊きたてのあきたこまちと削りたてのかつお節に自家製白土佐醤油、
吟味された素材のよさがまっすぐに伝わってきます。


あっという間の1泊2日でしたが、両親や祖父母の頃の古き良きものが大切に守られている、
もうひとつの故郷のような安らぎに包まれたひとときでした。
今の時代、気づかれぬうちに失われてしまったものも、きっとたくさんあるのでしょう。
そのなかで、こうして再び旅人を迎える名湯宿として蘇ったことがうれしく、次の世代にも伝えたいと思いました。

今度はまた違う季節に、どこにも行かずに宿での滞在を愉しんでみたいものです。

※お食事内容は季節やプランにより異なる場合がございます。

(本記事は2022年11月の取材内容です。)

湯けむりの宿 稲住温泉
公式サイトはこちら

【秋田県湯沢市の紅葉見頃時期】
10月下旬~11月上旬(気象条件により前後する場合があります。)

著者名:

全国の共立ホテルチェーンにいる、自分の店舗が大好き!で地元愛に溢れるスタッフ。そして社外から共立ホテルズを応援してくださるFANの方々。そんなDOMINISTAが特派員として活動中〜。