ホテル紹介

天然温泉と秋田の美味にうっとり みちのくの名湯宿『湯けむりの宿 稲住温泉』宿泊レポート≪前編≫

あまたの文人墨客に愛され
惜しまれつつ閉じた名宿が、大人の宿として復活

秋田県最古の温泉と伝わる秋の宮温泉郷「湯けむりの宿 稲住温泉」を訪れました。
秋の宮温泉郷は、奥羽山脈のほぼ中央に位置する栗駒山麓の名湯。
古くから多くの文人墨客に愛されながらも、時代の波に飲まれて閉館した稲住温泉ですが、
名湯宿を惜しむ声が絶えず、大人の宿として新たによみがえったとのこと。

1万坪を越える敷地に、客室はわずか49室。
静けさの中に木のぬくもりを感じる宿です。
フロントには、武者小路実篤からの手紙がありました。
終戦までの約半年間、妻子や1歳のお孫さんとともに疎開していた実篤にとって、
忘れられない懐かしい宿だったのですね。


フロントのすぐそばには眺めのよいロビー。
ウエルカムドリンクコーナーには、ソフトドリンクのほか純米吟醸酒やビールもありました。
さすが酒どころ秋田、大人の宿のおもてなしです。


いつかは泊まってみたい憧れの貴賓室「天の坐」
専用風呂でかけ流しの源泉を楽しめる客室も

名建築家ほど立地や自然の声に耳を傾け、それが唯一無二の建築物へと昇華するといいます。
稲住温泉の離れ「天の坐」にある4つの貴賓室は、
まさに匠の技の結晶ともいうべき文化財的建築。
洗練された美意識に包まれ「本当に豊かな時間とはなにか」を気づかされた気がします。


天の坐のほかにも、雲の坐、月の坐、湯の坐など、
かけ流しの自家源泉を客室専用露天や檜の内風呂で愉しめる客室がたくさんあります。


ひとめぼれした大浴場の景観に満たされ
渓谷を望む露天や貸切温泉も堪能

今回は専用風呂のない部屋にしましたが、
十分に自家源泉の名湯を愉しむことができます。
実は、このお宿を選んだ一番の理由は、身も心も滴る緑に染まりそうな大浴場。
いつか必ず訪れたいと心に決めていたのです。


こんなふうに、すべてを忘れさせてくれる温泉に身をゆだねて、
なにも考えずに、ただ目の前の季節に染まりたい。
訪れたのは秋も深まるころだけれど、吸い込まれそうな景観は期待を裏切らず、
とうとう来た、やっと会えたという幸せな思いに満たされました。

晴らしがよく、眼下を流れる荒湯川のせせらぎが聞こえ
深呼吸したくなるような山の香気に包まれます。
星空を見上げる夜の湯浴みや、朝風呂も気持ちよさそうです。


貸切風呂は2つ。
丸い陶器の湯船の「紅雲の湯」と、檜の湯船の「桜雲の湯」で、
空いていれば好きな時間に好きなだけ入れます。

さやさやと気持ちよさそうに風にそよぐ木々の葉を眺めながら、
かけ流しの自家源泉と戯れたり、静けさに耳を澄ませたり…。
いつのまにか忘れていた懐かしい何かが戻ってきたような、そんなひとときでした。


自然や地形が感じられる館内をめぐると
まるで小さな美術館のようにたくさんの作品が

湯上りに、館内をぶらりと散策してみました。
歩いてみると、自然や地形を大切に活かして建てられたことがわかる段差や曲がりがあります。
そして、秋田出身の画家や稲住温泉を愛した文人墨客の絵や書、葉書などがたくさん飾られていて、
まるで小さな美術館のよう。


味わいのある作品が多くて、くつろぎながらのんびりと向き合えます。
この人もあの人も、同じ湯につかって同じ景色を眺めたのかもと思いをはせ、
なんとも贅沢な湯上りのひとときになりました。

ライブラリー「月心」では、武者小路実篤の全集や
世界的な建築家ブルーノ・タウトの『日本の家屋と生活』もあり、
壁の入浴心得のイラストも、なかなかユーモラス。


続きは後編へ…

(本記事は2022年11月の取材内容です。)

湯けむりの宿 稲住温泉
公式サイトはこちら

【秋田県湯沢市の紅葉見頃時期】
10月下旬~11月上旬(気象条件により前後する場合があります。)

著者名:

全国の共立ホテルチェーンにいる、自分の店舗が大好き!で地元愛に溢れるスタッフ。そして社外から共立ホテルズを応援してくださるFANの方々。そんなDOMINISTAが特派員として活動中〜。