ささいなこだわり

ポンポコ鳴るには、
ワケがある。

2021年9月、
いんこのピンチに「たぬき」現る!?
でお伝えしていましたが、
工場生産ラインの事情による「ご麺なさい」製造終了から約8ヶ月…

いま、カップ麺の製造現場はどんどん再編が進んでいて、
何十万、何百万という大量ロットでなければ、まず生産することはできません。
初代ご麺なさいも、その渦中で涙を飲んだのでした…。
そんな中、さらに「ホントにごめんなさい…」っていうくらいのロットを希望する私達DOMINISTA。
ご麺なさいの後継を生み出してくださるメーカーさんなんてあるのかな…

協力してくださる会社様を見つけることが最大の課題だったのでした。

そして!
現れてくださった、まさに救世主が…
そう、“たぬき”さんなのです。


『山本製粉株式会社』様


大正5年、愛知県豊橋市で創業。
製粉業からスタートし、
いまでは製粉以外に、
袋麺、カップ麺、乾麺、LL麺(ロングライフ麺)を、
日本のみならず、アジア、アメリカでも販売を行っている企業様です。
変わること無く豊橋市を拠点に、
地元・東三河地区を愛し、地元を大切にする企業として知られています。

その山本製粉株式会社様のアイコンが、
看板商品である「ポンポコラーメン」とともに歩んできた“たぬき”さん。
そこには、
ラーメンでお腹いっぱいにして欲しい=お腹ポンポコ、という
創業者の方の思いがあったのでした。

今回、この私達の無理難題を聞き入れ、
そして何度も試作を繰り返し、
製造まで共に走りぬいてくださった山本製粉株式会社様。

2022年5月10日、火曜日14時。

山本製粉 ✕ dormy inn
旨れかわったご麺なさい1号がウマれる、
この日、この時間に、
取材に伺いました。



(左から)常務取締役 営業本部長 鈴木さま、
営業部 鹿嶋さま、
製麺部 製造課長 山本さま


開発のポイントは、コミュニケーション

鈴木
初代の「ご麺なさい」は、やはりロットの関係で、
昔懐かしい醤油味としてイメージが近い市販のものが選ばれていたと伺いました。
今回ドーミーインさんから最初にお聞きしたのは、
「新しいご麺なさいは、
 できるだけ夜鳴きそばに近づけてオリジナルで開発したい」というご要望でした。
今回の開発、PB商品としてはハードルが高い挑戦だとは思いましたが、
弊社の代表がドーミーインさんのファンであり、
私たちも夜鳴きそばを知っていたこともあり、
なんとかご協力したい!、精一杯やろう!、頑張ろう!、
ということで取り組むことになったんです。

鹿嶋
最終的にドーミーインさんからOKをいただくまで、
試作は7回になったと思います。
はじめに「夜鳴きそば」のレシピをいただいていたのですが、
それでもやはり試作を重ねるうちに、いろんな調整が出てきたんです。
味を伝え合うって、大変…
試作のたびにドーミーインさんからも、
“もっとコクを”、あるいは“コクが強すぎるかも?”とか、
“少しこれをこうして欲しい”というご意見をお聞かせいただくのですが、
私がそれを正しく理解して、社内や協力会社の方に、
よりわかりやすく伝えないといけません。
いわばお客さまの率直な意見を、
味に翻訳していく仕事なんですが、
これほど難しいとは思いませんでした…

山本
今回だけのことではなく、
常務からは「ダメだ」とか「無理だ」というのを勝手に1人で判断するな、
といつも言われています。
わからなければ常務に相談して、その上でできるかどうか…
例えばスープだったらスープメーカーさんが決めることもあるだろうし、
とにかく回り道をしてでもいい、
途中で止めちゃうのはもったいないという意識があったので、
そこは私からも何度か鹿嶋君にお話しました。

鈴木
私たちは、スープに限らず、
協力してくださるいろんなメーカーさんに助けていただいています。
味については、ある程度のOK領域までは行くんですが、
そこから先、「あともう少し何か…」という部分については、
人間の味覚なのでどうしても違いが出てきます。
そこを「これくらいで似てくるんじゃないかな、どうかな」という感じで合わせていって、
微調整を繰り返して、“納得”というゴールにたどり着くという流れです。

鹿嶋
作り上げていく大きな要素は3つです。
かやく、麺、スープ。
それぞれは単体で納得いただける仕上がりになっても、
ラーメンとして一緒にして食べた時に、
やはり微妙なバランスが合いません。
そこをまた、繰り返し微調整し…
とにかく、ドーミーインさん、弊社社内、そして取引先のメーカーさん。
この関係の中でしっかり聞き、
伝えていくことが、私が一番苦労したポイントです。
そしてもうひとつ勉強になったのは、
お客さまの要望を聞くだけではいけない、ということでした。
お客さまに、「山本製粉は色々融通が利く、色々なことができる」と思っていただきたい気持ちは、全社員一緒です。
より良いものを作るためには、
こちらからもプラスアルファを提案するように、
常務や山本さんからアドバイスをいただいてきました。

鈴木
開発をするにあたって、
部署が多くなると、お客さまとの温度差がどんどん広がると思うんです。
私たちは基本的に仕事の役割をあまり固定していません。
今回の担当は鹿嶋君ですが、
担当がお客さんと一緒になって色々動いた方が、
当の本人が一番よく聞いて理解しているので、早く動けます。
とはいえ、常に一人だけで窓口を担当するわけではなく、
時には一緒に聞きに行ってみたりして、
思い込みをしすぎていないかなどと様子を見ながら、
関係する人とお客さまとの温度差をなくして、
一緒に作り上げるように心がけています。

ようやく決まった、新しいご麺なさいのレシピ。
もう一踏ん張り。

鹿嶋
7回の試作を通して、
“全体のバランス”が決め手でした。
最終的に決まった仕様はこうです。
スープは新開発、
麺は弊社の既存のもの。
かやくは、アオサ、キャベツ、ネギ、メンマ。
アオサとキャベツは、どちらも、初代・ご麺なさいには入っていませんでしたが、弊社からご提案して採用いただきました。
私も常務も、このお話を進めている中、
何度も出張でドーミーインさんに宿泊して、
お腹いっぱいの時でも、必ず夜鳴きそばを食べて(笑、
あーでもない、こーでもないと二人で話してました。
で、アオサってやっぱり重要だなって。
そして味を調整していく中で、
ポンポコラーメンに入っているキャベツも、
最終的には、かやくに入ることになったんです。

山本
麺も新しく開発し、かやく、スープも決まった。で、またひとつ課題が…
カップの中に入る袋の数です。
そこも何度も試行錯誤して、
1袋は最初から入れるスープとキャベツ、
もう1袋は、アオサとメンマという後入れかやく、という形で、
最終的には2袋になりました。
途中、3袋案が出たこともありました。
実はメンマって硬いので、先に入れるスープと一緒に入れたかったんです。
だけど、硬いゆえに、スープとメンマを同じ袋に入ると、
メンマがスープの粉の上で固定された形になって
“悪さ”をして袋を痛めてしまう可能性もあります。
お客さまにはお手数をかけるのですが、3袋案も試し、
ドーミーインさんにも納得いただいたんですが…
そうなると今度は封入工程でカップの蓋を閉める時に、
3袋だと厚くなって蓋に傷をつける問題が出るかもしれないということになり、
より安全に製造できるように、最終2袋になったんです。
また、カップ麺の容器についても、
今回の初回製造分が終わって、次回製造分については、
さらに「お湯の線がわかりやすいように」というご要望にお応えできるように、
改良版を準備中です。

とにかく、鹿嶋君が常務やメーカーさんと相談しながら詳細まで詰めてくれたので、
製造する私は、正直なところ特に大きな苦労もありませんでした。
このあと製造ラインで動き出す新しいご麺なさいの第一号で、
多少の機械の微調整はあるかと思いますが、
美味しくできあがると信じています。
原材料の練り、板状に圧延(伸ばし)、細断、蒸し、フライ、乾燥、そして包装。
ぜひご覧になってください。

鈴木
私達のようなサラリーマンにとって、
ドーミーインさんの夜鳴きそばって、すごいありがたいんです。
出張ではお客さまとの会食が多いのですが、
こちらがおもてなしをする側なので、
営業マンってなかなか食べてるようで食べてないんですよね。
お酒は飲んでるんですけど、
お腹がポンポコになってない状態でホテルに帰るものですから、
あの一杯がホントに美味しいねぇ、って…。
そこで初めてポンポコになるって感じです(笑。
もう、ありがたいしかありません。
そのお手伝いができたっていうのも、
やっぱりありがたいという気持ちです。

お客さまとの交流


鈴木
物価がどんどん上がってくるものですから、
昨年の年末からアウトレットのような取り組みを始めたんです。
本社建物の入り口入ってすぐの小さなスペースで、
少し欠けちゃったりだとか、グラム数が少なかったりというような品物を置いていて。
納品や搬入の運送会社のドライバーさんが、
「それでも全然構わないよ」って、
ご自身や会社に買って行かれたりというところから始まりまして。
それが私達にとって、“一般のお客さまとの交流”なんです。
実は、こんなアウトレット展開する前からでも、
近所のおじいちゃんやおばあちゃんが通りすがりに本社に来て、
いろいろ話したりするのも、ある意味お客さま交流の原点かもしれません(笑。
今ではちゃんと買っていただける品物もありますので、
喜んでいただけています。
こんな取り組みがまたどんどん伝わって
とある施設で出店展開してみないかという声もいただいています。
で、今年の7月くらいを目処に、敷地内の駐車場の一部に、
簡易的な建物を作って、アウトレットコーナーを作ろうかと思っています。

本社建物入り口すぐの場所にある「ポンポコ アウトレット」コーナー。

山本
私、そのために先日、
重機を操縦する免許を取りに行きました(笑。

鹿島
すごい日焼けしてますもんね(笑。
工場直売所みたいな感じになると思います。
最初はラーメンだけにしようかな、という話だったのですが、
お客さまの声を聞いてるうちに色々広がりそうで…。
海外ともお取引があるので、
「コンテナに色んなもの乗せてよ」って。
さっきも電話があったのですが、弊社の商品以外にも、
ナッツやエビ煎餅も入れて欲しいとか。
で、エビ煎餅って言う割には「海鮮入れちゃダメだよ」とか、
もう意味不明なこともあります(笑。

鈴木
この海外向け『たぬき親父の逸品 激辛まぜめん』も、
そんなお取引先様の声とチャレンジから生まれた商品です。
これはここに来られたお客さんではないんですけど、
数年前に中国に出張に行った社員が、懇意にしていただいている中国のお客様から
「最近実は韓国の商品で辛いのが売れだしてきてて」、という話があって。
当時は辛いって言っても唐辛子みたいなのでいいのかな、
と思って何回か試作したんです。
すると、
「こういう“辛い”じゃないんだよ。
 中国も韓国もそうだけど、“辛い”って2種類の辛いがあるんだよ。
 マーとラーをやらなきゃダメだよ。」って。
唐辛子だけの辛いじゃなく、痺れるような。
当時は痺れるような、という言葉ではなかったので、
いろいろ協力してもらいながら作り上げたんですが、
海外だけではなく、日本…と言っても三河地区ですけど、
今ではすっかり人気商品になりました。

原点を大切にしながら、
いつも新しいことを。


鈴木
私たちのポンポコラーメンっていうのは、
発売から60年近く経つんですけど、
当時、まだまだラーメンの価格が高かった時でも
“お腹いっぱい食べてもらいたい”、という創業者の思いが原点です。
なので袋麺については、ほかのメーカーさんの5食入りと同じ価格帯で、ずっと6食入でやっています。
世界情勢や原材料、人件費の流れがある中で、
何度も5食にしようかとかいうことがありました。
どの業界もそうですが、今年もさらに大変になっています。
だけどやっぱり創業の気持ちを持ち続けよう、
お客さまにご満足いただきたい、
という気持ちが込められた思いの深い商品です。
そんな細いこだわりですが、
業界の常識にとらわれないという部分…
今回、ドーミーインさんといろいろお話する中で、
実はドーミーインさんに共感していることでもあるんです。
ビジネスホテルで大浴場とか(笑。

山本
アウトレットも含めて、お客さまやお取引先様と一緒になって、
協力し合って買ったり売ったりして、
たとえ今のような困難な時代でも乗り越えていけるような…
そんな商売をしたいと思っています。
そして、地域の方々が
「あそこに行こうよ」って安心してお越しくださるような工場であり、
販売店でありたいです。

鹿嶋
そういえば、
「創業の頃から試食会を町の方と一緒にやったんだよ」、
という話を聞いたことがあります。
当時から独自に開発して行こうというより、
いろんな味を聴きながら作り上げている会社なんだなって…。
鈴木常務と山本さんのお話を改めて聞けば聞くほど、
今さらですが…
ドーミーインさんの声をしっかりお聞きできたかどうか、
不安になってきました。
お客さまのご感想など、
びくびくしながらお待ちしています。






鹿嶋さま。
しっかり聞いていただいたどころか、
たくさんのわがままや、
妙なこだわりもすべて受け止めていただき、
本当に感謝しております!
とにかく、作っていただいた「ご麺なさい」、
私達は大満足しています!
いんこのピンチを見事に救っていただきました!
ありがとうございます!!!






原点を大切にし、
いつもお客さまのことを考え、
細いことにこだわり、
仲間とともに
新しいことへの挑戦を続ける。

山本製粉様の願いは、
お腹だけではなく、
気持ちも含めていっぱいに膨らむことだと
教えていただいたように思います。

ポンポコ鳴るには、
それだけの理由があったのでした。



6/1、いよいよ明日…




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【ご麺なさい】危機一髪⁉







著者名:

DOMINISTYLEの活動を楽しんでいただくために、様々な活動を行っています。サウナビギナーで、最近、ウィスキングに興味津々。