下町歴史部

やっぱり銀座は特別。
<前編>
『銀座は残り、金座は消えた……』

田中教授の下町散歩。

しかし今日は「下町」と言っていいのかな…と思いつつ、
若き日の田中教授の一面にも触れる歴史の旅、
さて、ぶらぶら参りましょう。




銀座には風格がある。
今は高級ブランドの旗艦店が軒を連ねて、
縁のない私などは銀座より金座が相応しいと考えるのは、
貧乏人の僻(ひが)みであろうか。
ところが江戸の昔には金座、銀座が存在していたのだから、
ミステリーな歴史が見え隠れする。


題して、
《銀座は残り、金座は消えた……》


――今は走馬灯のように蘇る銀座は、
前回のオリンピックに湧いた昭和39年から63年頃である。
経済成長と共に車社会が訪れて、
廃止されたのんびりムードの東京都電。
銀座では敷石を再利用して歩道を拡幅し、
優稚な「銀ブラ歩道」が街並を変えた。
銀座通りの道幅(約27メートル)は
歩道と車道の比率がほぼ1対1。
歩行者を何より優先している。


訪れる店は「伊東屋」。
材料・加工と洗練された丁寧な仕事は
それだけでクオリティーを高めてくれる。
現在のビルに建て替える前はITOYA(2)・(3)と三箇所があり、
「無いものはない」が魅力であった。
現在は効率性が時代を反映し、
それはそれで良いのだが、
アナログ派としては昭和時代の品揃えが懐しい。


買もの帰りには美味しい店が待っている。
煉瓦亭のサラットしたカツレツは、
昔も今も別もの感がある。
片やとんかつ梅林、ネーミングは平凡でも、
この店のスペシャルカツ丼には脱帽だ。
伊東屋の裏には銀座ブラジルがあり、
コーヒーにチキンバスケットが人気だった。

ついでにデパートガールを昼食時間に呼び出し、
屁の出るような恋♡…
いや間違いではございません、クサイ話で……


ところが何故かブラジルが閉店。
銀座連はガックリ、でも
私の地元新仲見世には本店があり、
浅草にあって銀座ブラジル。
フライドチキンの概念を超えたエンコの味。
ブラジルを見つけた銀座連が
目からウロコの話は一度や二度でない。

銀座ブラジルのチキンバスケット。今でも浅草で健在。チキンだけじゃなく、一緒に盛られるトーストとピクルスも絶品!

いやはや、銀座散歩が食いしんぼ散歩になったので、
本題に入るとしよう。



――16世紀末、徳永家康は金貨を鋳造する『金座』を日本橋に設け、
金貨を鋳造する職人の町「金吹町(かねふきちょう)」には
大勢の鋳造人が住んでいた。

一方、当時の銀座は
東海道に面した静かな職人町であったが、
幕府はここに銀貨を鋳造する『銀座』を設ける。
周囲には両替商が集まるようになったので、
「新両替町」と名付けられる。
ところが職人町の住民感覚として、
金貨より銀貨の方が流通に適している。
そこでいつしか『銀座』の愛称で呼ばれるようになり、
現在に至っている。

場所は二丁目伊東屋・英国屋から裏へ
昭和通りにかけての一帯であり、
中央通りにかけての一帯であり、
中央通りに「銀座発祥の地」の記念碑が建っている。



さて、消えた金座だが、
どっこい金融のシンボルとして建在である。
そこで梅雨明け7月下旬、
猛暑にめげず日本橋めざし参上!



――1896年、日本銀行は現在の日本橋本石町に本店を建てた。
場所は「本両替町」、つまりその地こそが金座の跡地である。
当時、日本橋は日本一の繁華街であったが、
金座は奥にあり賑いには遠かった。
町民が運営した銀座に対し、
地元の後藤家が世襲で管理したため、
ひっそりと受け継がれていたのである。


日銀発行のお礼と云えば「円」。
本店の屋根場にはその象徴が示されているという。
したがって地上からは見えず天空から眺めれば
巨大な「円」の文字が現われるそうだ。
ならば町歩き“トマソン”としては確認の必要がある。
そこでトナリのマンダリン・オリエンタル38階に上って見たら、
デッカァ……!

でもなァ、
当時は「圓」の漢字だったから、単なる偶然か?

円と圓の決着はいかに? ただ、当時から圓を円と略すこともあったという話もちらほらと…。


南眼下に三井本館と三越(越後屋)。
江戸時代、富士の名所として富士見通りを広重は描いている。
東京では一年のうち寒い時期60日ほどしか見られない。
湿度の高い7月では見える筈もないと思っていたら、
日没寸前午後7時、
丹沢山塊にくっきり浮び上ったのは驚いた。
奇跡の遠望、月までポッカリと……。

写真右上に、うっすら浮かぶ富士の影…。その左上が月…。


《金座に富士》とは、
長生きするもんだねェ……


<文・写真 田中けんじ>






地元浅草から銀座へ、こんな暑い日でもしっかり自転車。
「絵描きにとってITOYAは本当に何でも揃う店」という田中教授の銀座散歩、
明日、また後編でお会いいたしましょう。

今は浅草・新仲見世にある「銀座ブラジル」のカツサンド!




著者名:

DOMINISTYLEの活動を楽しんでいただくために、様々な活動を行っています。サウナビギナーで、最近、ウィスキングに興味津々。